情報提供:建通新聞社
トクホ(健康増進)住宅に期待
耐震偽装事件やエレベーター類の強度不足など、何かと暗い話題に振り回された住宅・建築物分野から、久々に明るいニュースが飛び込んできた。住む人の健康増進や働く人の生産性向上につながる住環境を創造するという試みに、産官学が連携して乗り出すことになったのだ。成果がまとまれば、建築産業にとって大きな意味を持つものになりそうだ。
検討主体となるのは国土交通省の「健康維持増進住宅研究委員会」(村上周三委員長)。国民が真の豊かさを実感できる社会を実現するためには、一日の中で多くの時間を過ごす住宅・建築物の質の向上が不可欠というのが委員会の共通認識だという。
これまでシックハウス問題に対応した健康住宅などの研究はあったが、「建築学、環境学、医学、化学などの垣根を越えた本格的な研究は初めて」(国交省・和泉洋人住宅局長)。建物のプラス面に着目する取り組みは極めて意欲的であり、大いに評価できる。
特に注目されるのが、「特定保健用食品(トクホ)制度」の概念を住宅・建築物に導入しようという発想だ。
この制度は個々の食品について、健康を保つ成分が含まれるかどうかを厚生労働省が科学的な根拠に基づき審査し、効能の表示を許可する仕組み。2005年に許可基準を緩和した「条件付き特定保健用食品制度」ができたことで、適用の幅が広がり、健康志向の高まりと相まってブームに火がついた。
こうした機運にあやかろうと、研究委員会の「健康増進部会」(田辺新一部会長)では、健康増進などの技術要素を抽出するとともに、室内で発生する事故の事例などを分析し、健康増進住宅の総合的な評価手法の開発を目指していきたい考えだ。
とはいえ、その実現には課題もある。住環境を構成する要素は幅広く、個々の感覚にも大きく左右される。健康の増進や生産性の向上につながる効能を科学的に立証するのは決して簡単なことではない。7月の会合では、田辺部会長が「重く難しい宿題を課せられた」と先行きに不安をのぞかせる場面もあった。
ただ、住みやすさ、働きやすさの客観的な指標ができれば、消費者にとっては選択の幅が、建築産業にとってはビジネスチャンスがそれぞれ広がることは間違いない。価格や立地だけにとらわれがちな建物の価値に対する認識を改めてもらうきっかけにもなり得る。建物の総合的な環境評価ツールである「CASBEE」(建築物総合環境性能評価システム)の評価項目に、こうした指標を組み入れる構想もあるという。
研究期間は3年間。本年度中に研究の方向性が固まる。住宅・建築物分野の地平を切り開くような実りある成果を期待したい。
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